こどもたちのために。
もりのなかでおこった、
こころあたたまるストーリー、
いろんなところにいって、
いろんなどうぶつとおはなしして、
こころは、とじこもらないように・・・。





もりの まんなかには、いっぽんの もみのきが たっていました。
もみのきは、せいたかのっぽで、おつきさまも その きを めじるしに、
おやまの むこうから のぼってくるほどでした。
ごがつの かぜが、 さわさわと きのはを ゆらす ひるさがりの ことでした。
のっぽの もみのきは、かぜに ふかれて あんまり きもちが よかったので、
いつのまにか うとうと いねむりを はじめました。
しばらくすると どこかから、ちいさな なきごえが きこえてきました。
くすん くすん。
もみのきは ぱちりと めをひらき、よいしょと からだを おりまげて、
あしもとを みおろしました。
おやおや おや?
ぢめんに ちいさな ちゃいろの けだまが ひとつ ころがっています。
ふわふわの たまは ひっく ひっく とふるえていて、
よく みると それは のうさぎの ぼうやでした。
のうさぎの ぼうやは、ちゃいろの からだを ちいさく まるめ、ないていたのです。
ひっく ひっく ひっく。
もみのきは おどろいて、
「どうしたのかな」と、こえを かけました。
そのとたん、ぼうやは びくんとからだを ふるわせて、
こんどは ほんとに おおきな こえで なきはじめました。
のうさぎの ぼうやは、もみのきが なにを いっても、なきやみません。
「おいしい どんぐりの あるところを おしえてあげる」
「みつばちが はなしてくれた ひろい のはらの おはなしを してあげる」
ぼうやは それでも ないています。
もみのきは、すっかり こまってしまい、 そらを みあげました。
「こんなときには だれかの たすけを かりなくちゃ」
すると ひがしの そらから かぜが ぴゅるるんと ふいてきて、
「ほらほら、こんなときには、 たんぽぽのわたげ」と いいました。
もみのきは にっこりわらい、あしもとに ひろがる もりに むかって
「たんぽぽの わたげ」と いいました。
しゃらん しゃらん。しばらくすると、もりのおくから
たまを ころがすような ふしぎなおとが きこえてきました。
そのおとに おどろいて、
ないていた のうさぎの ぼうやが かおを あげました。
めは まっか、おはなは ずるずる。
「なんて おっきな かたつむり!」
ぼうやの まえに あらわれたのは、
おうちのような おおきな からを せおった かたつむりでした。
からは うすい ももいろで、 むこうがわが はんぶん すけて みえます。
ひかりが さすと、からは にじいろに ひかったので、
のうさぎの ぼうやは おもわず みとれてしまい、
しばらく なくのを わすれました。
ぼうやが また かなしくなって なこうと したときでした。
かたつむりは あたまから するすると
つのをだし、 からだ ぜんたいを ぼうやのほうにむかって、
うんと さげました。
つのの さきには、たんぽぽの わたげが ついていて、
「ほらほら、これを ふっとふいて かなしいことを とばしなさい」と
かたつむりは いいました。
「ぼくの もうふ、どこかに とんでいったの」
だいすきな おれんじいろの もうふが
けさから ゆくえふめい。
ぼうやの めは また なみだで いっぱいに なりました。
「いいから いいから、このわたげを とばしましょう。もうふが
みつかるように おねがい しながら、ふう ふう ふう」
かたつむりは また いっぽ、のうさぎの ぼうやに ちかづきました。
ぼうやは まだ すこし ないていましたが、きを とりなおして
わたげを ふくことに しました。
ふうー、ひとふき。
わたげは びくとも うごきません。
ふう、ふうー。まだまだ。
ふう、ふう、ふうー。
ぼうやは、ほっぺを いっぱいに ふくらませ、おもいきり わたげを ふきました。
「わあ、とんだ」
たんぽぽの わたげは、ふわりふわり ちいさな たねを かかえ、
とんで いきます。
ちいさな たねは おそらに むかって いいました。
「もうふを もっていった ひとは かえして ください」
のうさぎの ぼうやは、あんまり いっしょうけんめい わたげを ふいて とばしたので、
すっかり つかれて、いつのまにか ねむって しまいました。
もみのきは そんな ぼうやを、だまって みつめています。
しゃらん しゃらん。
かたつむりは、ぼうやの ゆめのなかで、
ゆっくり ゆっくり きたときと おなじように
もりの おくに かえって いきました。
そのよるの ことでした。ひがしの かぜも ぴたりと やんで、
おつきさまが ゆっくりと のぼる ころでした。
もみのきは、あしもとで ねむる のうさぎを みていました。
そのとき、くろいかげが もみのきを かすめました。
ばさり。
なにかが おちてきます。
ふわりふわり。
おれんじいろの なにかです。
ふわり。
それは、ねむっている ぼうやの うえに おちました。
もみのきが くろいかげを めで おうと
いたずら からすが はずかしそうに わらっています。
からすは 「かっ」と ひとなきし、
「わたげさんに、ききました。ごめんなさい」と いいながら、
しずかに ねぐらに かえって いきました。
おつきさまの ひかりの なかで、
のうさぎの ぼうやが ぐっすり ねむっています。
おれんじいろの もうふの はしを
ぼうやは しっかり にぎっています。
ちょっと わらって いるような かおでした。
もりは よるになりました。
おやすみなさい。

ふかいもりが ありました。
もりの まんなかには、
いっぽんの もみのきが たっていました。
もみのきは、せいたかのっぽで、
おつきさまも その きを めじるしに、
おやまの むこうから
のぼってくるほどでした。
ごがつの かぜが、
さわさわと きのはを ゆらす
ひるさがりの ことでした。
のっぽの もみのきは、
かぜに ふかれて
あんまり きもちが よかったので、
いつのまにか うとうと
いねむりを はじめました。
しばらくすると どこかから、
ちいさな なきごえが きこえてきました。
くすん くすん。
もみのきは ぱちりと めをひらき、
よいしょと からだを おりまげて、
あしもとを みおろしました。
おやおや おや?
ぢめんに ちいさな ちゃいろの
けだまが ひとつ ころがっています。
ふわふわの たまは
ひっく ひっく とふるえていて、
よく みると
それは のうさぎの ぼうやでした。
のうさぎの ぼうやは、
ちゃいろの からだを ちいさく まるめ、
ないていたのです。
ひっく ひっく ひっく。
もみのきは おどろいて、
「どうしたのかな」と、
こえを かけました。
そのとたん、
ぼうやは びくんとからだを ふるわせて、
こんどは ほんとに おおきな こえで
なきはじめました。
のうさぎの ぼうやは、
もみのきが なにを いっても、
なきやみません。
「おいしい どんぐりの あるところを
おしえてあげる」
「みつばちが はなしてくれた
ひろい のはらの おはなしを してあげる」
ぼうやは それでも ないています。
もみのきは、すっかり こまってしまい、
そらを みあげました。
「こんなときには
だれかの たすけを かりなくちゃ」
すると ひがしの そらから
かぜが ぴゅるるんと ふいてきて、
「ほらほら、こんなときには、
たんぽぽのわたげ」
と いいました。
もみのきは にっこりわらい、
あしもとに ひろがる もりに むかって
「たんぽぽの わたげ」と いいました。
しゃらん しゃらん。
しばらくすると、もりのおくから
たまを ころがすような
ふしぎなおとが きこえてきました。
そのおとに おどろいて、
ないていた のうさぎの ぼうやが
かおを あげました。
めは まっか、おはなは ずるずる。
「なんて おっきな かたつむり!」
ぼうやの まえに あらわれたのは、
おうちのような おおきな からを せおった
かたつむりでした。
からは うすい ももいろで、
むこうがわが はんぶん すけて みえます。
ひかりが さすと、
からは にじいろに ひかったので、
のうさぎの ぼうやは
おもわず みとれてしまい、
しばらく なくのを わすれました。
ぼうやが また かなしくなって
なこうと したときでした。
かたつむりは あたまから するすると
つのをだし、
からだ ぜんたいを ぼうやのほうにむかって、
うんと さげました。
つのの さきには、
たんぽぽの わたげが ついていて、
「ほらほら、これを ふっとふいて
かなしいことを とばしなさい」と
かたつむりは いいました。
「ぼくの もうふ、どこかに とんでいったの」
だいすきな おれんじいろの もうふが
けさから ゆくえふめい。
ぼうやの めは
また なみだで いっぱいに なりました。
「いいから いいから、
このわたげを とばしましょう。
もうふが みつかるように おねがい しながら、
ふう ふう ふう」
かたつむりは また いっぽ、
のうさぎの ぼうやに ちかづきました。
ぼうやは まだ すこし ないていましたが、
きを とりなおして
わたげを ふくことに しました。
ふうー、ひとふき。
わたげは びくとも うごきません。
ふう、ふうー。まだまだ。
ふう、ふう、ふうー。
ぼうやは、ほっぺを いっぱいに ふくらませ、
おもいきり わたげを ふきました。
「わあ、とんだ」
たんぽぽの わたげは、ふわりふわり
ちいさな たねを かかえ、
とんで いきます。
ちいさな たねは
おそらに むかって いいました。
「もうふを もっていった ひとは
かえして ください」
のうさぎの ぼうやは、
あんまり いっしょうけんめい
わたげを ふいて とばしたので、
すっかり つかれて、
いつのまにか ねむって しまいました。
もみのきは そんな ぼうやを、
だまって みつめています。
しゃらん しゃらん。
かたつむりは、ぼうやの ゆめのなかで、
ゆっくり ゆっくり
きたときと おなじように
もりの おくに かえって いきました。
そのよるの ことでした。
ひがしの かぜも ぴたりと やんで、
おつきさまが ゆっくりと
のぼる ころでした。
もみのきは、
あしもとで ねむる のうさぎを みていました。
そのとき、
くろいかげが もみのきを かすめました。
ばさり。
なにかが おちてきます。
ふわりふわり。
おれんじいろの なにかです。
ふわり。
それは、ねむっている ぼうやの
うえに おちました。
もみのきが くろいかげを めで おうと
いたずら からすが
はずかしそうに わらっています。
からすは 「かっ」と ひとなきし、
「わたげさんに、ききました。ごめんなさい」
と いいながら、
しずかに ねぐらに かえって いきました。
おつきさまの ひかりの なかで、
のうさぎの ぼうやが
ぐっすり ねむっています。
おれんじいろの もうふの はしを
ぼうやは しっかり にぎっています。
ちょっと わらって いるような かおでした。
もりは よるになりました。
おやすみなさい。
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